2013年9月9日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.29

本日はイタリアに数あるミルの中でも、最も「エレガンテ」と言っても良いであろう「Carlo Barbera」社をご紹介させて頂きます。

創業者はカルロ・バルベラ氏。彼はオレステ リベルテイという工場のチーフテキスタイルデザイナーとして働いていたのですが、ある日織物工場を経営しないか?という話が持ち込まれました…

その工場は、トスカーナの丘陵地帯、ストローナ川とソッカスカ川という綺麗な川がある小さな村にあり、水や空気、環境に恵まれた、まさに織物には最適な場所でした。

1949年、カルロ・バルベラはこの工場を引き継ぎ、こうして「Carlo Barbera」は誕生しました。

「Carlo Barbera」の生地は、16/18ミクロンという細かさのスーペリアというオーストラリア原産の羊毛と、中国とモンゴル原産のカシミアのみで生産されます。最上のウール原毛を吟味して買い付け、イタリア国内の提携し信頼できる紡績工場のみを使い、丁寧に糸が紡がれていきます。

そうして工場に届いた糸は、糸の緊張を解くために地下の倉庫で寝かせます。「Carlo Barbera」のすごさはこの工程にあります。バルベラ社の糸倉庫は岩を切り出してつくった処にあり、Strona川の水が引き込まれているこの場所は一年中気温が7度、湿度75%に保たれているのです。この地下倉庫で糸は本来の特性を取り戻し、これが”ただの糸”から”カルロ・バルベラの織物”となる工程で最良の結果を引き出す鍵となっています。独特のふっくらとした生地の風合いを出すのにこの工程はなくてはならないモノなのです。

仕上げ工程はこのブログでも何度もお話した様に生地の表情を決定する大切な技術ですが、「Carlo Barbera」の特徴は糸の段階で上記のような工程を経る事で生まれる独自性にあると言えます。

さらにイタリアNo.1の洒落者とも言われる現社長「Luciano Barbera」氏が指揮を執りデザインされた、程よく英国趣味が入った洗練された色柄のコレクションは毎シーズン必見と言えるでしょう。

そしていわゆるカットレングスをしていない点、これも「Carlo Barbera」「Carlo Barbera」たらしめている特徴?かも知れません。イタリアの大手生地メーカーはカットレングス、いわゆる一着分単位の販売網を確立しており、我々もその流通を利用させて頂き生地を手配しています。これに対してバルベラの生地はオフィシャルなカットレングスの販売網がない為、商社や生地卸の問屋がまとまった量で買い付けてきたバルクの中から独自にカットレングスでの販売を行っています。

こうした事情からバルべラの生地は希少性という点も魅力の一つとなっており、私も商社さんや卸問屋さんを巡っては「Carlo Barbera」を探し求めているのです。

因みに近年、「Carlo Barbera」社は「Kiton」グループに買収され、現在では「Kiton」の手掛けるスーツやジャケットの多くの生地は「Carlo Barbera」社製と推測されます。