2013年9月30日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.34

振り返ってみますと前職時代を含めるとオーダーメイドに携わって早18年の月日が経とうとしています。

当時は「KITON」や「ISAIA」、「Belvest」等、いわゆるクラシコイタリアと呼ばれるイタリアのクラシックスーツが本格的に日本に紹介され始めた時期で、その軽い着心地や流れるようなシルエット、細番手の素材使いなどに私自身もすっかり魅了されていました。国内のスーツ工場にイタリアのスーツを持ち込み、バラバラにしてそこからパターンを作ってみたり、イタリアで買ってきた芯地で作らせてみたり・・・試行錯誤の毎日でした。しかし一向にイメージするものは出来ずサンプルチェックと工場周りに時間を費やすばかり。

その間に国内のスーツ工場はどんどん閉鎖され、私が関わっていた工場も残念ながら幾つかは廃業となってしまいました。現場は高齢化がすすみ、稼働率も軒並みダウンし、どちらかと言えば斜陽産業化していたスーツ工場。そんな中、ある人物との出会いによってその後今に続くロゼストのオリジナルオーダーメイドの原型が出来ていきました。

それは関西の某工場で出会ったS部長。第一印象は声の大きいおじさん(笑)。そのS部長、今まで出会った工場の方達と一つだけ大きな違いがありました。当時20代後半だった私がパターン製作の為にある工場の裁断責任者やパターンナーの方々を前に「ここはこんなイメージでこのような見え方」、「ここはもっとヴォリュームを出して欲しい」、「この部分にもっと丸みが欲しい」etc・・・とにかく当時はイタリアのスーツを啓蒙していたので、ダメ出しばっかりしていた訳です。工場の方達の反応は概ね「技術屋でも職人でもない若造が理想ばっかり言っとる」的な捉え方で、うちのラインではこれが限界ですと途中で断られるケースが常でした。

しかしこのS部長、まず違ったのはミーティングの席に工場の若い方を同席させ、皆で私の話を一生懸命聞いてくれ、途中で絶対に口を挟まないという事。普通はラインで流れている工場ですから製作過程の全てに限界値があって、その中で出来ない事はすぐに無理ですって言ってくるものなんですが、
S部長はニコニコしながら若造の理想に耳を傾けてくれました。そして「おもろそうやからやって見ましょう」と言って当時その工場で生産していたパターンや縫製工程と全く違うモデルの開発を引き受けて下さったのでした。

それが2000年前後の事、そこから私とS部長の執念のモデル作りが始まったのでした・・・

                                                             
                                                             つづく

2013年9月23日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.33

オーダーメイドでスーツやジャケットをお作り頂く際に是非ともこだわって頂きたいのが「ボタン」です。

特に色目のあるジャケットの場合はボタンの色や素材によって印象が随分と違って見えるものです。
せっかくこだわって選んだ生地にはこだわりのボタンを付けたいもの!当店では様々な種類のボタンをご用意しております。



素材としてはホーン(水牛の角)・コロッツォ(椰子科の実)・シェル(高瀬貝や蝶貝)の3素材をご用意しております。最近では上記の天然素材に似せたプラスティック製のボタンも氾濫しておりますが、経年変化もなく、耐久性にも劣りますのでロゼストでは取り扱いしておりません。

ではそれぞれの素材の特徴ですが・・・

ホーン
カラーはブラック~グレイ、飴色っぽいものからベージュが一般的です。仕上げによって光沢を出す事もでき、光沢感は使用とともに増していきます。色に関しては経年による変化はほとんど見られません。素材的に重厚感を感じさせる為、一般的にはスーツに使われる事が多いタイプです。ホーンにも様々な形、厚さがありますので素材との相性やお好みによってお選び頂けます。
下記は当店で取り扱いしておりますホーンボタンの一部になります。

ロゼストオリジナルとして別注作成している
ホーンボタンです。周りの盛り上がりが少なく、
底部のふくらみは浅めに仕上げています。
少しモダンな雰囲気の漂うボタンです。













上記と同じくオリジナルです。珍しいホワイトホーン!
コットンやリネンスーツ、ジャケットにマッチします。













中心部は艶消しとし、ボタン周囲だけ光沢仕上げとしたタイプ。底部はフラットに近い仕上げ。
落ち着いた雰囲気でダークスーツにマッチします。













上記と似ていますが、こちらは全面光沢仕上げで中心部が一段下がったデザイン。ダークな色目とホーンならではの飴色がミックスされたクラシックな雰囲気。
ダークスーツはもちろん、ネイビーやブラウン系のジャケットにもおススメです。











こちらもミックスホーンですが、中心部がかなり掘り下げられており、ボタン自体の厚みもかなりのものです。ツイードやカシミア等のボリューム感のある生地との相性が良いボタンです。













綺麗なグレイのボタン。ホーン素材でこのような色目はかなり珍しいのではないでしょうか。
全体的に薄く作られ、底部はほぼフラットです。
ライトグレイのスーツやジャケット、ベージュ系のジャケットのアクセントにも良いかも知れません。














コロッツォ
椰子科の実から作られたボタン。特徴は染色が容易なので、様々なカラーのものがチョイス出来る事。また光沢感も様々で触った時の温かみのある感覚はホーンやシェルでは得られないものです。
難点はものによっては経年変化で変色する恐れがある事。染めているのである程度は仕方ないかも知れませんが気になる方は避けられた方が無難かも知れません。
スーツ、ジャケット問わずお使い頂ける汎用性の高い素材と言えます。


十分な厚みを持ち、底部はかなり膨らみを持たせた形状になっています。伊No.1スーツメーカー、アットリーニが好んで使用するものと同一のクオリティです。













中心部がかなり凹んだ形状の面白いボタンです。サイドの厚みもかなりありますので、カジュアルっぽい素材感のジャケットにマッチします。














中心部はマットな仕上げ、周りのみ光沢感を出した仕上げです。底部はフラットに近く、ボリュームを抑えたデザインになっています。
写真のような綺麗な中間色はコロッツォならではの魅力と言えます。












はっきりとしたエッジがなくヌメッとした仕上げが
面白い。ボタンの厚みも薄めで優しい雰囲気。
ヘビーコットンやコーデュロイ、ツイードなど冬場のウォーミーな素材にマッチします。














シェル
高瀬貝や蝶貝などを使っているため、基本的に天然の光沢があります。カラーも白~グレイ、ベージュ~ブラウンが基本ですが、近年では染色によりダークカラーに仕上げたものも存在します。
その清涼感を感じさせる見た目から春夏のジャケットに使われる事が多い素材です。欠点は割れたり欠けやすい事と、クリーニングの溶剤によっては光沢感がなくなってしまう場合がある事です。


定番的な真っ白のタイプ。
これはやはり夏のコットン、リネン素材が王道ですが、ジャケットだけでなく素材によってはスーツに付けられても良いかと思います。













ホワイトからグレイにかけての天然のグラデーションが美しいタイプ。近頃ロゼストではホワイト一色よりこちらをお選びになられるお客様が多くなっています。





ボタンはジャケットの中で唯一アクセサリー的な要素があるパーツです。
デザインがクラシックなジャケットこそディテールでこだわりを見せたいものです。




2013年9月20日金曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.32

このブログで当店のオーダーメイドスーツのモデル説明や補正、生地の話をご紹介してまいりましたが、本日は実際にご来店頂き、オーダーを承る際の手順をご紹介させて頂こうと思います。

 まず承りは営業時間内(11:00 ~ 20:00)であれば何時でも可能ですが、生地選びの際に太陽光の元で生地サンプルの色目をご覧頂いた方が出来上がりをイメージして頂きやすいかと思いますので、出来れば昼間のご来店をお勧めしております。
 ご来店時ですが、ジャケットの袖丈、パンツの長さも採寸時にお合わせする為、普段お召しのドレスシャツ、シューズをご持参頂ければ、微妙な長さのお好みにお合わせしやすいかと思います。
(シャツは店舗にサイズサンプルがございますのでそちらをお使い頂く事も可能でございます。)

ご来店頂きましたらまずはソファでゆっくりとお話をお伺いさせて頂く事からスタートします。

・どういうシチュエーションでお召しになられるものをお作りするのか?
・お好みのスタイルはどういう感じか?
・体重の増減はある方かない方か?
・お仕事でお召しになるものであれば、座っている時間が長いかはたまた出張等で動き回る事が多いか?
・ジャケットならお持ちのパンツの傾向はどんな色、素材が多いか?
・おおまかなご予算は?

等々、お伺いさせて頂く事で、私の中で具体的なイメージを作っていきます。形のお好み等は例えば雑誌等の写真をお持ち頂く等していただいても非常に参考になります。
お話をお伺いするお時間ですが、平均すると20~30分程度といったところでしょうか。

 次は生地選びです。お気に召して頂ける生地が見つからないことにはその先に進めませんので
上記でお伺いしたお話を元に、各生地メーカーの膨大な生地サンプルの中より当てはまりそうなクオリティや色柄をある程度選択しながらご覧頂きます。この生地選びは最も楽しくまた時間のかかるパートでもあり、私も約5.000種類の生地サンプルの中からイメージに合いそうなものをピックアップしていく作業は真剣勝負であります。特に生地バンチの小さな生地片でご覧頂いているのと実際の出来上がりでは生地によって見え方が随分と変わってしますものもありますので、その辺りをご説明しながら時間をかけてゆっくりと絞り込んでいきます。
生地選びにかかる時間ですが、これはもうお客様によって様々ですが、平均すると30分 ~ 40分、かなり悩まれた場合は1時間程度でしょうか・・・

生地が無事に決まれば次は採寸となります。
採寸はバスト、ウェスト、ヒップに始まり、計10箇所をメジャーリングし、その数値を基にしてベースサイズを割り出していきます。そして次にお話をお伺いしたイメージを基に当店のモデルの中でイメージに近いものからサイズゲージを順番に羽織って頂き、デザインや着心地のお好み、体型との相性をチェックしていきます。そうして基本となるモデル、サイズを決定していきます。
決定しましたら、サイズゲージをお召し頂いた状態でお客様のお好みやバランスを見ながら各部のサイズをピンを打ちながら調整していき、オーダーシートにお客様のサイズ情報を記入していきます。そして同時に体型のクセに応じて体型補正の補正量もチェックしていきます。
この採寸全般にかかる時間は概ね20~30分程度となります。

ここまで来ましたらもう一息です。採寸後今度はポケットやベント、ステッチなどのデザイン的な部分をお伺いし、ボタンやライニングの素材、色までお好みのものをお選び頂きます。ここは10分程度のお時間があればおおよそ大丈夫です。

そして最後に承りました生地やモデル、デザインなどの最終確認をさせて頂きご注文承りとなります。

そして上記をご覧の通り、約1時間半程度のお時間を見て頂けます様、何卒宜しくお願い申し上げます。

2013年9月17日火曜日

「URU」新作入荷

高度な技術を誇るタンザニアのジュエリー職人が手掛ける「URU」。


当店では上記「Mviringo」と名付けられた、控えめなシルバー彫金のチョーカータイプを取扱しておりましたが、本日より期間限定にてより大ぶりなシルバー彫金にダイアモンドを始め様々な天然石をセッティングしたシリーズが入荷しております。





特に何億年もの歳月をかけ、タンザニアの大地奥深くで形成されたラフダイアモンド、そしてタンザニアでのみ採れる貴重な宝石「タンザナイト」は「URU」を象徴する石とも言えるでしょう。




写真のパープルがかったブルーの石がタンザナイト、一番右、ブラックのヒモに付いているのがラフダイアモンドになります。


2013年9月14日土曜日

「SPIGOLA 」 W Monk Strap Shoes


ご注文を承っておりました「SPIGOLA」のWモンクストラップシューズが出来上がってまいりました。


お客様のご注文はオールブラック x ゴールドバックルというクラシックなスタイル。コンサルティング業の要職として世界中を飛び渡っていらっしゃる御注文主様の足元を飾るに相応しい、シックで控えめな1足です。ビジネスシーンではパテックフィリップのYGケースの時計を合わせられる事が多い為、それに合わせたバックルのセレクトもお洒落です。




トゥはシャープになればなる程、華美なイメージに見えがち。お仕事柄あくまで黒子に徹する事が求められる為、適度なボリューム感を持たせつつ、少しエッジを残したトゥシェイプ。

こちらはキャップトゥですが、お好みによってメダリオンやパーフォレーションをデザインする事ももちろん可能です。



流れるようなストラップのデザインは「SPIGOLA」を代表するデザインの一つと言っても良いでしょう。


ソールもブラック仕上げ。

今回はビジネス用としてのリクエストですが、Wモンクはカジュアルっぽく振ってもかっこよくキマるモデルでもあります。例えば型押しのレザーや揉み革、ステッチには少し太めの白糸を施し、ソールはダイナイトやビブラム等といったアレンジもおススメです。

次回「SPIGOLA」オーダー会の日程は10月下旬を予定しております。






2013年9月11日水曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.31

ここ2週間程にわたって当店で取り扱いのございます生地メーカーをご紹介して参りましたが、本日はイタリアで最も規模の大きなミルである「Canonico」社をご紹介させて頂きます。


毛織物の産地として名高いビエラ地方で1936年に創業しました。
山や丘が多く、豊かで美しい水に恵まれたビエラ地方は、この地理的条件が豊かな繊維産業を育んでいます。
紡績から機織、染色まで自社で一貫しておこなっている大規模なミルであり、その生産量のほとんどはメンズ生地となっております。中でもSuper100's やSuper110'sのプレーンなコレクションは、世界中のアパレルメーカーが幅広く採用しており、ベストセラーとなっています。
特徴はしなやかで光沢があり、着ていることを感じさせない軽い着心地とソフトなフィット感。
そしてリーズナブルな価格帯の生地が豊富な事も「Canonico」の大きな特徴の一つです。

最近では秋冬のフランネル素材に上品な色柄のものが多く、当店でも人気となっています。

2013年9月10日火曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.30

本日はイタリアでも最古参の一社である「Cerruti 1881」社をご紹介致します。

創業はブランド名にも掲げている通り、1881年にまで遡ります。イタリア、ビエラ地方で綿工場としてスタートしたのが始まりです。1957年には紳士服のプレタポルテをスタート、それ以降、香水やシューズ、バッグ等トータルブランドとして今日に至っています。
一つのブランド内で製造から完成品まで仕上げる行程を一貫して行うシステムを作り上げた先駆者的な存在であり、現在のゼニアやロロ・ピアーナの先駆けとも言えます。


そのコレクションの特徴は一貫してモダンさを追求している事。他社メーカーの新しい柄やクオリティに比べ、「Cerruti 1881」は独自の感性を貫いた色柄やクオリティを持ったコレクションを発表し続けています。
角度によって見えるシャドーストライプやドビー柄、一見クラシックなストライプでもメタリックな光沢感であったり、通常は緯糸に使うシルクを縦糸に使用したウールxシルク地であったり・・・
一見普通に見えつつ良く見ると新しく、クラシックを再解釈した生地を生み出しています。
さらに、少量生産のものが多いのですぐに完売し、新しいシーズンごとに新しいコレクションが発表されるところもファンには楽しみな部分でもあります。

生産はオーストラリアから最高基準の原毛のみを厳しい基準から選び、紡績から生地の出荷まで自社工場で一貫して行っています。伝統をベースにしながらも、最新の織機、設備を組み合わせた高い技術で独創的な素材作りを続けており、光沢感となめらかな手触りはクオリティの高さを物語っています。

当店では一通り色々な生地メーカーをお召しになって来られたお客様が、その独創的な色柄に惹かれてお選びになられるケースが多く、そういう意味では非常に玄人受けする生地が多いと言えるかもしれません。





2013年9月9日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.29

本日はイタリアに数あるミルの中でも、最も「エレガンテ」と言っても良いであろう「Carlo Barbera」社をご紹介させて頂きます。

創業者はカルロ・バルベラ氏。彼はオレステ リベルテイという工場のチーフテキスタイルデザイナーとして働いていたのですが、ある日織物工場を経営しないか?という話が持ち込まれました…

その工場は、トスカーナの丘陵地帯、ストローナ川とソッカスカ川という綺麗な川がある小さな村にあり、水や空気、環境に恵まれた、まさに織物には最適な場所でした。

1949年、カルロ・バルベラはこの工場を引き継ぎ、こうして「Carlo Barbera」は誕生しました。

「Carlo Barbera」の生地は、16/18ミクロンという細かさのスーペリアというオーストラリア原産の羊毛と、中国とモンゴル原産のカシミアのみで生産されます。最上のウール原毛を吟味して買い付け、イタリア国内の提携し信頼できる紡績工場のみを使い、丁寧に糸が紡がれていきます。

そうして工場に届いた糸は、糸の緊張を解くために地下の倉庫で寝かせます。「Carlo Barbera」のすごさはこの工程にあります。バルベラ社の糸倉庫は岩を切り出してつくった処にあり、Strona川の水が引き込まれているこの場所は一年中気温が7度、湿度75%に保たれているのです。この地下倉庫で糸は本来の特性を取り戻し、これが”ただの糸”から”カルロ・バルベラの織物”となる工程で最良の結果を引き出す鍵となっています。独特のふっくらとした生地の風合いを出すのにこの工程はなくてはならないモノなのです。

仕上げ工程はこのブログでも何度もお話した様に生地の表情を決定する大切な技術ですが、「Carlo Barbera」の特徴は糸の段階で上記のような工程を経る事で生まれる独自性にあると言えます。

さらにイタリアNo.1の洒落者とも言われる現社長「Luciano Barbera」氏が指揮を執りデザインされた、程よく英国趣味が入った洗練された色柄のコレクションは毎シーズン必見と言えるでしょう。

そしていわゆるカットレングスをしていない点、これも「Carlo Barbera」「Carlo Barbera」たらしめている特徴?かも知れません。イタリアの大手生地メーカーはカットレングス、いわゆる一着分単位の販売網を確立しており、我々もその流通を利用させて頂き生地を手配しています。これに対してバルベラの生地はオフィシャルなカットレングスの販売網がない為、商社や生地卸の問屋がまとまった量で買い付けてきたバルクの中から独自にカットレングスでの販売を行っています。

こうした事情からバルべラの生地は希少性という点も魅力の一つとなっており、私も商社さんや卸問屋さんを巡っては「Carlo Barbera」を探し求めているのです。

因みに近年、「Carlo Barbera」社は「Kiton」グループに買収され、現在では「Kiton」の手掛けるスーツやジャケットの多くの生地は「Carlo Barbera」社製と推測されます。

2013年9月8日日曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.28

さぁ、本日もイタリアの生地メーカーをご紹介!

本日はこれまた有名なマーチャントの一つである「Cacciopolli」(カチョッポリ)をご紹介致します。

フラテッリ・カチョッポリ社はハイクオリティな生地を扱うテーラーマーケット向けのマーチャントとして、ナポリに1920年に創業された、約90年を超える歴史のある会社です。ナポリを中心にイタリア・イギリス・フランスなどのヨーロッパを始めアメリカや日本等、様々な国のテーラーやオーダーショップに生地を供給しています。

特徴はナポリならではの鮮やかで明るい色柄や織柄を多く取り揃えている事。そして、毎シーズンごとにニューコレクションが加わり、常にバリエーション豊かなコレクションが揃っている点です。
また近年のトレンドを反映し、コットンやリネン、ベルベットやコーデュロイ等、非ウール系素材のバリエーション拡充が著しく、お客様の嗜好に合わせた柔軟なセレクションには定評があります。

例えば、アイルランドで織らせた本物のアイリッシュリネンは、とてもコシのある触り心地で、カラーバリエーションが豊富ですし、冬場のコーデュロイではウェイト違いにいくつかのクオリティを揃えており、製作するアイテムやお好みによりカラーとウェイトを細かく選べるほど。
コレクション全体を通して少しカジュアルというかリラックス感のある素材、色柄が多い点がナポリらしく、また「Cacciopolli」らしさでもあります。






2013年9月7日土曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.27

昨日の「Ariston」社に引き続きましてイタリアの有名マーチャントである「Drapers」をご紹介致します。

「Drapers」社はアルトゥーロ・ローリ氏が1956年にボローニャで創業した生地マーチャント。現在はアルトゥーロの息子であるドメニコ・ローリ氏が社長を務めています。
「Drapers」は自社で企画した生地の製造をミルにオーダーしたり、ミルが持っているコレクションの中からピックアップしたりという形態をとりながら、数シーズンに渡って展開していくレギュラーラインと、シーズン限りで取り扱う「Lolli Suggestins」という2つのラインでコレクションを展開しています。

ちなみに社名は英語で「服地商」を意味する「draper」と、イタリア語で「テーラーのための服地商」という意味の「drapperie per sarti」をかけ合わせたもの。創業はどちらかと言えば新しい部類に入りますが、その高い審美眼、バラエティに富んだバリエーションはKitonやBrioni等のトップメーカーからも高い評価を得ており、世界中で人気を博しています。

その特徴ですが、生地メーカーには珍しく社長であるドメニコ氏が自ら世界中を飛び回り、私達取り扱い店やテーラーを回ってはお客様の声に耳を傾け、要望や意見を随時コレクションに反映されています。特にシーズンバンチである「Lolli Suggestions」はこういった情熱あふれるローリ氏の提案が色濃く感じられ、毎シーズン人気を博しています。

コレクションの大半はイタリアの様々なミルからセレクションされた生地ですが、英国で織らせた生地も取り扱っており、テイストによってミルの使い分けが非常に上手なマーチャントであると言えるでしょう。

おススメの生地ですが、それは何と言っても筆頭は「Lolli Suggestions」に尽きます。
毎シーズン、スーツ生地、ジャケット生地が約30種類程度づつのコレクションですが、上記に述べた通りドメニコ氏の審美眼に叶った選りすぐられたオールスターの様なバンチに仕上がっています。
特にジャケット生地に関してはヴィンテージ柄をモダンなカラートーンに置き換えたり、先シーズンですとフィレンツェの狩猟用のコート地として古くから伝わる「カセンティーノ」を多彩な色バリエーションで展開したりと他のメーカーでは見られない、非常にトレンドを意識し編集されたコレクションと言えます。

2013年9月6日金曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.26

本日はイタリアのトップマーチャント「Ariston」をご紹介させて頂きます。

1920年にナポリで創業した「Ariston」は、当時ナポリに数百件あったと言われているサルトリア(仕立て工房)に生地を卸すマーチャントとしてスタートしました。その後Kiton , Brioni , Cesare Attolini 等の高級既製服メーカーからも絶大な信頼を得てその事業を拡大していきました。

特徴はいわゆる「Ariston」らしいセンスの良さを感じさせるコレクションに尽きます。
彼らは世界中の上質な生地メーカーのコレクションをシーズン毎にチェックし、自分たちの感性に合うクオリティ、カラー、デザインのものだけを買い付けて「Ariston」の生地ブックを作成しています。
その生地のバラエティの豊富さ、トレンドを巧みに取り揃えた編集能力の高さは他ブランドには真似の出来ない「Ariston」の世界を形成しています。それ故に熱心なファンが多い事もこのブランドの特徴と言えます。

毎シーズン生地ブックが入れ替わる為、定番と言えるクオリティはないのですが、ここ数シーズンの流れで言いますと、Super130'sのウールコレクション。そして75%ウールx25%シルクのスーツ素材のバリエーションが豊富に揃っています。

またウールxライクラのストレッチ素材をコレクションに加え始めているところも、トレンド、マーケットの要望に積極的に応える「Ariston」らしい一面であると言えます。




2013年9月5日木曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.25

昨日に引き続きイタリアの生地メーカーをご紹介させて頂きます。


本日は「Ermenegildo  Zegna」をご紹介致します。

その歴史は古く19世紀後半にまで遡ります。時計製造を営んでいた創業者アンジェロ・ゼニアは、4台の織機を使いウールの生産を始めました。その後、息子であるエルメネジルド・ゼニアがこの工場を引き継ぎ、1910年にビエラ地方のトリヴェロの地でラニフィーチョ エルメネジルド ゼニアを設立しました。

彼は早くから国際的なビジョンを持っていました。
それは、最高級の 天然繊維 を原産国から直接買いつけ、製品と技術の革新を推進し、積極的なブランド戦略を行うというものでした。このビジョンが、完全な垂直統合システムを実現した、世界でも稀有な生地メーカーの土台となりました
彼の国際的ビジョンにより、エルメネジルド ゼニアのファブリックは1938年、 アメリカに輸出されるまでに成長し、 1945年までには40カ国以上で販売されるようになりました。

1960年代後半にはプレタポルテの生産をスタート、1972年にはパターンオーダースーツの展開をスタートする等、彼らの世界観を表現した製品が世界中で展開されていきました。
今日では80を超える国と地域で取り扱われており、「Ermenegildo Zegna」は世界中の人々に愛されています。

生地作りの特徴は「科学と自然」、「クラフツマンシップとテクノロジーの融合」
伝統的な手法の上に革新を重ね、世界で最も新しいテキスタイル作りが行われている先進的な一面を持っています。

原毛の選択から仕上げまで – 生産の全工程はエルメネジルド ゼニアによって行われ、 品質への揺ぎ無いこだわり、 熟練の職人技術を支える科学技術の採用にかけては他の追随を許しません。

軽量化、柔軟性の向上、機能性の進化において先駆的な存在であり、毎シーズンその動向から目が離せないトレンドセッター的な役割も担っています。

おススメの生地はやはり最先端の技術が生かされたクオリティ。最新のパフォーマンスとクラシックな色柄が融合された唯一無二の素材が魅力です。

「Traveller」
「トラベラー」は、 柔軟性と弾力性が極めて高いスーパーファインウールを使用。糸に強い撚りをかけ、さっぱりとした見た目とパリッとした触感を実現しています。 その為極めてシワになりにくく、 通気性にも非常に優れています。移動が多い方や長時間スーツを着用する頻度が高い方などに最適なファブリックです。

「Traveller micronsphere」
表面を常に清潔に保つ蓮の葉の驚くべき撥水特性をヒントに開発されたゼニアらしい素材。 「トラベラー」のファブリックのパフォーマンス特性と柔軟性を損なわずに、汚れに強く撥水性を持った特別な仕上げ技術が施されています。

「Cool Effect」
ゼニアのラインナップ中、最先端のイノベーションである「クールエフェクト」(ウール100%)は、 直射日光の熱から着る人を守る、 初めてのファブリックです。 「クールエフェクト」のエクスクルーシブな仕上げプロセスにより、 濃い色の布地でありながら白色の布地と同じように太陽光を反射します。
その効果は夏の太陽光を80%反射させ、表面温度を10度下げると言われています。

2013年9月4日水曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.24

当店でお取扱いさせて頂いております英国生地を8回に渡ってご紹介させて頂きました。
本日からはイタリアの生地メーカーを数回に渡ってご紹介していきたいと思います。

まずイタリアと言えば・・・ご存知「Loro Piana」社

その歴史は1924年にピエトロ・ロロ・ピアーナがテキスタル会社を創立したのが始まりです。
以降イタリアの伝統的な家族経営を貫き、イタリアのテキスタイル生産の中心地、ピエモンテ州にて原材料の良さを最大限に引き出した生地を生産しています。

「Loro Piana」の一番の特徴は、紡績メーカーから原毛を購入し自社工場で服地を織るというミルの域を超え、糸の原料である繊維の生産から紡績、服地の生産までを全て自社内で行う自社一貫体制のスタイルをとっている事です。
他にもこの業態をとっているメーカーはありますが、他社が大量生産の薄利多売に走る中、「Loro Piana」は一貫して最高級の原料から最高級の製品を作り出す事にこだわり続けているのです。

更に最高級の生地として世界中で評価を確立した後、1980年代に入ると自社ブランドを立ち上げ、アパレルの分野に進出。1993年にニューヨーク、続いてミラノ、ヴェネチアそして東京と、世界の主要都市に次々と直営店をオープンさせています。更に2006年にはインテリア部門へも進出。ライフスタイルをトータルにプロデュースできるラグジュアリーブランドとして他の生地メーカーとは一線を画す存在となっています。。

生地の特徴はまず柔らかな風合いと高貴な艶感。英国生地にはない繊細で女性的な色気とでも言いますでしょうか、思わず触れてみたくなる様な雰囲気を醸し出しています。世界中で生産されているメリノウールSuper100'sの30~40%を「Loro piana」社が買い付けているというエピソードに代表される様に、細番手の生地には特に力を入れています。

中でもお勧めのクオリティは・・・

TASMANIAN
「Loro Piana」の名を一躍世に知らしめたのがタスマニアンウールです。これはオーストラリアのメリノ羊から採れる最高品質のウールの中でも16マイクロン、すなわちSuper150'sの原毛だけを選りすぐったものです。この希少なメリノウールを惜しげもなく使い織られた生地は、オールシーズン対応できる高い吸湿性と持続的な発散作用により水分を大気へ放出することが出来ます。
更に浸透性がよく、いつまでもその生地の高級感を持続させることです。その高級感、風合い、光沢はこの生地だけが持つ唯一無二の存在と言えます。


WISH Super 170's
優れた生地を作る決定的な要素は優れた原料です。
オーストラリアのファインメリノウールの中でも、15マイクロンというとても考えられない細さで織り上げられた原毛から織られたカシミアのような滑らかな手触りが特徴です。1メートル当たり270グラムという軽さも美しいドレープを描き、着心地も軽くシーズンを問わず1年を通して着用出来ます。



2013年9月2日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.23

英国発祥の生地メーカーを色々とご紹介して参りましたが、本日は英国伝統の「カントリーライフ」に特化し、歴史を刻んできたマーチャント「Porter & Harding」をご紹介致します。

1947年にカントリースポーツを愛した2人の人物、ジョン・ポーターとビル・ハーディングによって設立されたカントリー服地専門マーチャント。
英国原産のチェヴィオット種の羊毛を使用したツイード地が特に有名で、それらは創業当時と同じ製法で現在も織り上げられています。
質実剛健でありながら、英国紳士のカントリーライフを彩るスーツ、ジャケット地として、英国本国は勿論のことそんなカントリーライフに共感を持つ世界中の紳士から愛されています。

そのコレクションはカントリースーツやジャケット、ハンティングジャケットやニッカーボッカーズを想定したへヴィな打ち込みに、まさに伝統的な英国柄と言えるチェックやウインドゥペイン、そしてヘリンボーンやバーズアイ等の柄を組み合わせたカントリークラシックなものと言えます。

しかしながら、これらがクラシック=古臭くみえるか?と言うと答えは「ノー」であり、むしろ少しカジュアルで柔らかなスーツ、ジャケットに仕立てれば、いわゆる「アーバンカントリー」な雰囲気、それも本物だけが持つ匂いを持った一着を楽しむ事が出来ます。

その世界観を代表する生地といっても差し支えないのが「Thorn Proof」です。

ハンティングゲームでの着用を想定したツイード服地で、THORN(枝・棘)PROOF(耐える)の名の通り、服地に棘が刺さってもものともしないタフな服地素材です。

ウェイトは390gと560gの2種類が存在しており、これはハンティングのシーズンによってウェイトを使い分ける事が出来るように配慮されているそうです。このヒストリーだけで男心が揺さぶられます!
特に打ち込みの効いた560gの生地は他ブランドには到底コレクション出来ない本物のカントリーツイードと言えます。


「Solway」

「Porter & Harding」の世界観を、メリノウール使いのスーツ地で日常的に楽しめるように発展させたクオリティが「Solway」です。
直径約18ミクロンのファインメリノウールを使用し、よりライトに織り上げることによって3シーズン着用可能な服地となっています。またスーツはもちろんジャケット単品での着用も可能で、様々な着こなしをお愉しみいただけます。

ポーター&ハーディングが誇るカントリーツイードの世界を、メリノウール使いのスーツ地で表現した名作"グロリアス・トウェルフス"を更に発展させたのが、この"ソルウェイ"。直径約18ミクロンのファインメリノウールを使用し、よりライトに織り上げることにより3シーズンの着用を可能としました。また、"グロリアス・トウェルフス"同様にジャケット単品での着用も可能で、様々な着こなしをお愉しみいただけます。